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category: きがかりなこと

きがかりなこと/茄子 - ある茄子の、夏のできごと。

LastModified : Sun Mar 16 13:47:26 2003
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ある茄子の、夏のできごと。

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母はステキな頭をしている。よく考えない内から、一旦「解らない」あるいは「知らない」と宣言すると、その途端、それは "事実" として定着してしまう。 親子なので私にもそういう傾向はあるが、やはり元祖である母の徹底ぶりには敵わない。 そうして私は、恐怖の夏を体験した。


正式名称は知らないが、我が家で長く、「茄子炒り」と呼び習わされた惣菜があった。 高1の夏、私は突然、この茄子炒りを「旨い」と思った。

*

高2の夏、まだ一度も食卓に上がっていなかった「茄子炒り」を、私は母にリクエストした。 母はさして興味もなさそうに、「何?それ」 と言った。

私が幼少の頃から、「茄子炒り」は「茄子炒り」と呼ばれ、私に「茄子炒り」という言葉を叩き込んだのは、家庭であり母である。私は怯えた。そして懸命に「茄子炒り」を説明した。

「茄子炒りだよ、茄子炒り。茄子をさあ、こう、タテに6つくらいに切ってね、油で炒めてあってね、味は…醤油かなあ、鷹の爪か生姜の千切りが入ってて、たまに竹輪が入ってて、私はその、竹輪入りの茄子炒りが食べたい」 「知らない、そんなの」母はまるで無関心で、取り合おうとしない。

そしてその夏、ついに一度も、我が家の食卓に「茄子炒り」が上がることはなかった。 私は密かに恐れた。もちろん、母の痴呆を、である。 他に目に余るおかしな言動はなかったが、何で安心できようか。

*

高3の夏、私はドキドキしながら、待った。ドキドキしながら、静かに、待った。 決してこちらから問い掛けてはいけない。母に「知らない」と答える機会を与えてはいけない。

そうしてある日、「茄子炒り」は、食卓に復活を遂げたのである。何事もなかったように。 私はようやく安心して、母に言った。
「去年の夏、茄子炒り作って、って言ったら、お母さん、茄子炒りを知らないって言ったんだよ」
「茄子炒りを? そんなことある訳ないでしょ」
母は相変わらず関心がなさそうに、というより「またこの子がヘンなこと言い出した」という風に、 呆れ笑いを含ませた顔で答えた。

こうして私は、自分の母の脳がどんな構造をしてるか、理解していったのである。 母は所謂、「大らか」だったり「大まか」だったりする性格の人ではない。 どちらかと言うと、私同様、妙なところで神経質でさえある。 ただ驚くほど完璧に、思考停止が出来るのである。

近年、再び茄子炒りの話を母にした。やはり答えは、「そんなことある訳ないでしょ」だった。

2001/12/13(Thu)

母についての「知らない」言動はこちらにもゴザイマス→どうでもよい話2/彼女の話

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